ラシキアちゃんねる

朝、体温計が「今日は左回りで行こう」と言ったので、部屋の中を反時計回りに歩いた。 3周目で冷蔵庫が拍手をしたけど、手がないはずだから幻聴かもしれない。 鏡を見たら、映っているのが昨日の自分ではなく「明日の予定表」だった。 どうやら13時から雲と打ち合わせがあるらしい。 メモを取ろうとしたけど、ペン先からスープが出てきたのでそのまま飲んだ。 味は「過去っぽい」感じ。 昼過ぎ、郵便受けに知らない足跡が届いていた。 封を開けると、砂時計の中に犬が寝ていた。 たぶん時間を飼っているのだろう。かわいい。 夜、布団の上でスマホを開いたら、アプリたちが会議していた。 カレンダーが「もう11月にしたい」と言っていて、電卓が「それは非数値だ」と反論していた。 私は関係ないと思いながら、無意識にスクリーンショットを撮っていた。 でも確認したら、そこには何も写っていなかった。 多分、撮ったのは現実じゃなかったんだと思う。 寝る前に体温を測ったら、「夢です」とだけ表示された。 納得したので、寝た。

朝、起きたら部屋の時計が全部同じ時刻で止まっていた。 見たら、針の向きが微妙に違っている。 秒針が北を指しているものもあった。 とりあえず一番音のしない時計だけ外しておいた。 朝食はトーストを焼いたけど、焦げ目が「うすいおはよう」の形になったので、食べずに机の上に置いておいた。 パンが冷めると、形がだんだん崩れて「おやすみ」に変わっていた。 一度も声を出していないのに、喉が少し疲れた感じがする。 昼前、近所のスーパーへ行った。 入り口の自動ドアが反応しなくて、立ち止まっていたら、 中から店員が出てきて「お帰りなさい」と言った。 帰ってきた覚えはなかったけど、うなずいて中に入った。 レジで「ポイントカードはお持ちですか」と聞かれたけど、 店員の口は動いていなかった。 帰宅してから、冷蔵庫の中の卵の数を数えたら、昨日より一つ多い。 買ってはいない。けれど、数えるたびに違う気がする。 夕食を作ろうとして、結局その卵は使わなかった。 夜、電気を消して布団に入ったら、 暗闇の中で誰かが同じ息の速さで眠っているような気配がした。 確認はしていない。たぶん自分の呼吸がずれているだけだと思う。

朝、いつもより少し早く起きた。 枕の位置が逆になっていたけど、寝る前のことを思い出せない。 顔を洗おうと洗面所へ行ったら、蛇口の下にスプーンが立っていた。 特に気にせず水を出したら、スプーンが泡立った。 朝食はご飯に味噌汁、あと目玉焼き。 焼いている途中で黄身が二つに分かれたので、 それぞれに塩をふっておいたら、一方が少しずつ小さくなった。 結局、小さい方を食べた。味は普通だった。 出かけようとしたけど、外に出る靴がどちらも左足用だった。 履けなくはなかったので、そのまま出た。 近所の交差点に新しい信号ができていて、色が「白」「灰」「透明」の三つあった。 どのタイミングで渡ればいいか分からなかったけど、 他の人が全員立ち止まっていたので、私だけ渡った。 昼過ぎに図書館へ行った。 入館カードを機械に通したら、レシートが出てきて「お疲れさまでした」と書いてあった。 本を借りる前だったので、少し変だと思った。 でも、机に座ったらすぐに眠くなって、少しだけ目を閉じた。 目を開けたら、自分のノートに「また来てください」と書かれていた。 筆跡はたぶん自分のもの。 夕方、帰り道で風が強くなって、信号が一つ減っていた。 歩いているうちに靴が左右になっていた。 その瞬間、なんとなく安心した。 夜、冷蔵庫を開けたら、朝食べた目玉焼きが戻っていた。 皿の上で、少しだけ呼吸していた。

朝はいつもよりよく眠れた気がした。 夢は見なかったと思う。 起きてからカーテンを開けると、外がやけに明るくて、 ベランダの鉢植えが一晩で少し伸びていた。 コーヒーを淹れて、パンを焼きながらニュースを見たけど、 内容は昨日とほとんど同じだった。 午前中は掃除。 掃除機の音がやけに軽くて、 途中で止めたとき、床のほこりがまだ動いていた。 窓の隅に一匹だけ小さな羽虫がいて、 ずっと同じ位置で震えていた。 外に出そうとしたら、指に触れた瞬間、 空気の方が先に動いた気がした。 昼はスーパーに行って、卵と牛乳を買った。 レジで店員がいつもの人じゃなかったけど、 見覚えがある気がした。 会計の途中で、バーコードが鳴るたびに どこか遠くでチャイムが鳴っていた。 帰るとき、空が少し低くなっていた。 午後、机で書き物をしていた。 ペンのインクが途中でかすれて、 振ったら中から水音がした。 おかしいと思ってペン先を見たら、 ペン先がなくなっていて、指の先が少し黒く染まっていた。 夕方ごろ、家の中の時計が全部同じ時刻を指して止まった。 電池を替えようとしたけど、裏蓋がどれも外れない。 耳を近づけると、秒針の音が外から聞こえてきた。 窓を開けると、空気が濃くて、呼吸をすると音がした。 夜になって、電気をつけたまま横になった。 天井の模様が昼間より多くなっていて、 数えようとしたけど、途中からどれが模様でどれが目なのか分からなくなった。 そのうち、時計の針がまた動き始めた。 でも針は、時間のほうじゃなくて、 こっちのほうを向いていた。

飽きた